『GA基地防衛』

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 数時間前にその存在を確認された未確認AFを撃破せよと命令を下し、同基地に派遣された二名の専属リンクスと雇った独立傭兵に破壊に向かわせたが失敗に終わり、数こそ減らせたものの逆にこちらは二機が大破、一機が中破、更に搭乗者も一人は重傷、二人は軽傷だが内一名は極度の疲労と緊張により意識不明となり搬送されている。

 専属二名を、それも大事な時期に二名も戦闘不能にし、あまつさえ現状でミスが許されないこの状況で恥を晒してしまった。恐らく仮に基地防衛に成功しても自分の降格は免れないだろうなと当基地の高官はしみじみ思っていた。

 そんな中で、本日三機目にして最後の輸送機が到着する。停止位置まで誘導し到達後、後部大型ハッチを展開し中から現れたのは緑を基調としたタンク型のネクストで、その永久軌道をキュラキュラ言わせながらゆっくりと滑走路を我が物顔で進む。

「天恒勇か、強羅と同じくタンク型ネクストの睦月を駆る有沢専属リンクスだな、奴と違ってあの子は扱いやすいと上層部も言っていたな。それにAMS適性が低すぎて腕部は愚か脚部までもタンクタイプにしなくてはならなかった強羅とは違い、まともなAMS適性を持っている。今回こそは期待させてもらいたい物だがな…」

 そう言って高官は自分の部屋に宛がわれているデスクの上に置かれた今回雇ったリンクスを確認する。一人は先程ガラス窓越しに確認したので資料を目に通す必要は無い。無論、彼女に関する情報もGAのデータベースにアクセスすれば簡単に入手できるので彼女がファザコン気味ということも知っている。

 今回、雇った独立傭兵は二名。一人はカラードランクNo.10ベアトリーチェ。彼女については敵対した時はこっぴどい目にあったときもあるし、味方の時は非常に心強かった。その名前は同業者同士では畏怖されているらしく実力、容姿共にその噂にそぐわぬ名声を轟かせている。これほど心強い存在が居るのは実に頼もしい。

 そしてもう一人はカラードランクNo.57美鳳・M・クラスノヤロワ、フルネームはメイフォン・マクシモヴナ・クラスノヤロワ、あまりに長い名前から通称M・Mと呼ばれている最近登録されたばかりの新人である。こちらは彼女よりも寧ろネクスト技術者であった彼女の父親の方が有名である。技術者関係者にその名前を尋ねれば知らぬ物は居ないほどだと言う。

 そんな時、デスクの上においてある電話のブザーが鳴り響き、即座にボタンを押して応答する。

「私だ」

「司令官!どうなってやがる!?あんたが雇ったリンクスの一人が俺達整備班を不要だといって追い払いやがったぞ!どうにかしろ!」

「整備班班長、すなまいがそのリンクスの好きにさせたまえ、この基地に与えられた時間は一刻の猶予が無い。それよりもたった今到着した天恒勇の睦月とベアトリーチェのマヴェットソングの整備を最優先で行え、いいな班長。これは命令だ。」

 受話器越しから大きな溜め息が聞こえてくるが「イエッサー」と不満を隠さない声で了解を口に表すと電話を切る。高官は大きく溜め息を吐く。強羅を中心とした三名が返り討ちにあい基地に帰ってきて間も無く再度リンクスを雇い二回目の攻撃で撃破しろと上層部から伝達されている。

 もう既に防衛体制は完璧で通常兵器、ノーマル、戦闘機に戦闘ヘリをあるだけ機体を全機スタンバイさせ現在一部の部隊は見回り偵察を行っている。先程の攻撃で敵AFの進行は少なからずも遅れているだろう。その遅れが今の救いとなるだろう。今のうちに準備を出来る限り万端にしておくべきだろう。高官はその時が来るのをじっと待つことしか出来なかった。

 格納庫に到着した勇はハンガーに固定された睦月から降りて辺りを見渡す。慌ただしく動き回る整備員が到着したての睦月にも早速蟻のように集り始めて整備を始める。しかし勇はここで気になることが一つ。

 自分のネクストとその隣の漆黒のAALIYAHベースのネクストには整備班が居るのだが奥の白いネクストには一人も居ないのだ。不思議に思い近くの整備士を呼び止める。

「ねぇ、なんであの奥のネクスト誰も居ないの?」

「あぁ〜、何でも自分のネクストには指一本も触れるなと言ってきかねんだよ。数時間前に来たリンクスのオペレーターも俺らの仕事はいらないってくらいの仕事ッぷりだったが、あっちゃ背が小さかったから届かない部分は俺らに言ってくれた分遥かにマシだよ。あの女『勝手に触れるな!!』つって怒鳴り散らしたからな」

「ふぅ〜ん」

 そう言ってそのネクストの方に顔を向ける。確かに小さくも大きくも無い身長の少女が作業服姿で片手にPCを持ちながら機体のあちこちをウロウロしながら機体調整を行っている。淡々と無表情ではあるがその顔付き、目付きは真剣そのものだ。その真剣さは離れた位置にいる自分にすら伝わるほどの迫力だ。お年頃な勇は好奇心が焚きつき自分が思うがままに動いてその少女の元に歩み寄っていった。

 足音でも気付くぐらいにまで接近したのだが、当の彼女は気付いているのかそれとも気付かぬ振りをしているのか、どちらにせよ近づいてきた勇に全く反応を示すことなく黙々と片手に持ったPCのキーボードに指を走らせ、何かのデータをチェックしている。

 データを確認し終わり、ようやくPCを折り畳むとそこで初めて勇の存在に気が付いたのか顔を勇に向け、すぐに人の良さそうな笑顔を作る。遠くからでは解らなかったがその少女は綺麗なプラチナブロンドの髪を纏めて引ッ詰めにしている東洋系の少女だった。

「何か御用ですか?」

「あ、ううん、用って訳じゃないけどどうして一人で整備しているのかな〜って気になっただけで」

「そうですか、そう言えばお名前をお聞きしても良いですか?」

「あっ、ごめんごめん。忘れてた。僕は有沢重工所属の天恒勇だよ。勇って呼んでくれればいいから」

「勇ですね、どうも、メイフォン・マクシモヴナ・クラスノヤロワといいます。長いので美鳳で構いません。仲良くしましょ」

 美鳳はそう言うと片手で持っていたPCを直ぐ側のキャスターがついたデスクの上に置いてからその空いた手で握手をしようと手を差し伸べる。それに対して勇みは全く懐疑することなく、と言うよりも彼女がする理由もない。その握手に笑顔で素直に握手に応じた。

 握手をし終えて直ぐに立ち去るだろうと思っていた美鳳はキャスター着きのデスクに置いたPCを手に取ると再び再度の調整を始めた。今終わらせたのはジェネレータやFCSのチェック、各種ブースターの調整と確認で今から始めるのはAMS出力の調整や内装関係だ。特に美鳳の場合は自身の限界適性値以上のAMS出力に設定しているので、この辺は特に調整しておく必要がある。その為の作業に入ろうとしているのだが早々に立ち去ると思っていた勇が何時まで経っても立ち去る気配がない。しかもその視線は自分と自身のネクスト、バイタ シャン ディエンに注がれている。年相応の好奇心に満ちたキラキラした目でこちらを見つめている。流石に鬱陶しくなってきたので出来る限り笑顔を作って首を女に向ける。

「まだ何か用ですか勇?」

「うん、どうして自分一人で整備しているのかなぁ〜って思って」

「それはどうしても答えなくてはいけない質問ですか?」

「どうしてもってわけじゃないけど、気になっちゃって」

 屈託のない笑顔で、それも真面目に言われると逆にこちらが悪いようにも思えてしまう。それに彼女は本当の興味本位で尋ねてきている。もしも悪意があって尋ねてきたのなら人によっては拳銃を押し付けて脅して強制立ち退きしてもらうところだ。だが彼女になら少しくらい言っても良いかと思った。さもないと何時までもこの場に立っていそうだからだ。

「これは私の父親が唯一残した物なんです」

「じゃあ大切な物なんだ?」

 この問いに対して「ええ」と適当に答える。本当はかなり違うのだが、こうでも言わないと彼女は引き下がらないだろう。どうしてこんな無垢な少女がリンクスなどやっているのだろうと不思議に思ってしまう。

「お父さんの大切な遺物なんだ、じゃあ僕と一緒でお父さん大切なんだね」

「お父さん好きなんだ…ふ〜ん。悪いけど勇、今から大事な作業に入りたいから外してもらっても良い?」

「あ、ごめんごめん。じゃまた後でね〜」

 そう言って伸ばした黒髪を先の方だけを緩く三つ編みにした可愛らしい少女は自分の機体へと慌ただしく走っていく。途中で余所見をして整備員と正面衝突している姿が見受けられた。

「父は…私にこれしか遺してくれなかった。――――「お父さん」、ね…」

 彼女の記憶の中に居る父親の姿は何時も白衣に身を包み、自身の仕事と研究しか目に入っておらずそれに没頭し、家庭を顧みずひたすら自分の研究にのめり込んでいる姿しか残っていない。その怒りにも似た感情を押さえ込みながら愛機のコックピットへと入り、座席に座りそれからはずっと調整を行うだけだった。

 漆黒のAALIYAHベースの愛機、マヴェットソングのコックピット内で黙々と作業しているベアトリーチェは情報屋と自身の情報網を使って今回の仕事に関する情報を可能な限り集めていた。理由は今回初めて敵対するAFソルディオス・オービット。これに対して初めて相対するため、そして滅多にお目にかかれないAFの情報を手に入れることが出来る。

 ただAFは元より物事にもあまり興味も関心も示せない、寝て食って非常時以外は自由気ままに生活したいのだ。つまりダンテ、ウェルギリウス以外の人間も大体どうでも良くて自由奔放に生活したいだけだ。今の他人には出来ない贅沢な生活を送ることが出来ればどうでも良いのだ。

 AMS出力やFCSのデータが、接続されているAMSを介して自身の網膜にデータが表示され淡々とキーボードに指を走らせ調整確認を終わらせていく。網膜越しに表示される膨大なデータを平然とした顔で次々とシステムチェックを終わらせていき、最後の項目をチェックし調整の全工程を全て終わらせシステムをダウンさせ、ジャッキを外しコックピットから身を乗り出す。

 相変わらず左隣の白いネクストにはそのリンクス以外には一人として見当たらない、と思っていた矢先に一人の少女が慌ただしく走ってきてよそ見して整備員と正面衝突した可憐な少女にベアトリーチェは覚えがあった。あまり他人に興味薄な彼女にもほんの僅かだが意外と印象に残った少女だが、それがどうしたと言うことか、ベアトリーチェはするべき事を終えて下に降りていくとその少女にばったり出くわす。この子は人にぶつかることに対して天才的なのだろうかと思ってしまった。

「ワプッ、ご、ごめんなさい・・!僕よそ見しちゃって…」

「気にしないで、それより貴女ブラックゴートの記念パーティーの時に居たでしょ?」

「ふえ?えぇと…失礼なんですが会いました?」

「いえ会っていないわね。厳密に言えばデザートコーナーで一人で黙々とシュークリームを食べ続けていた姿を偶々見ちゃったからね」

 これを言われた勇は顔を真っ赤にしてもぞもぞし出して「み、見てました…?」とおずおずと聞いてきた。上目遣いで僅かに瞳を潤ませてこっちを見てくるため、その気がある人間はど真ん中ストライク。そっちの気がある同姓もど真ん中ストライクの顔だった。恥ずかしそうにするその態度も仕草も間違いなく破壊力絶大のストレートだ。まぁ彼女にはその気は無いのだが。

「ええ。見てたわ。でも恥ずかしがることは無いわね。翠屋のシュークリームなら私も美味しいと思うから」

 この言葉を聞いて先程までの恥ずかしがっていた顔はどこかへ吹き飛び、一挙に嬉しそうな顔に早代わりし目もキラキラ輝いている。すると今度はこちらの手を軽々しく握ってきて「だよね〜!?おいしいよね〜!?」と凄まじい勢いで一切の反論を許さない笑顔で迫ってきた。ここまで来て変な回答をするわけにはいかず、かと言って上手く一言でこの場を纏めるような言葉も見つからず、仕方なく彼女のシュークリーム話に花を咲かせざるを得なく暫くは付き合う羽目となる。

 偵察部隊からの報告だと敵AFの基地到達時刻は三時間後とのこと。今到達したリンクス達のネクストの整備を終えるにはもう少し掛かるのだが最速で一時間、出撃を掛けれる頃には二時間経過するかしないか、猶予は結局約一時間くらいしか残されない。敵AFの行進速度で残り一時間弱で到達すると言うことはネクストなら直ぐに到着する距離と言うことだ。そうなるとこの基地にまでAFの流れ弾の着弾によるコジマ汚染が危惧される。汚染と破壊、両方を兼ね揃えた技術ないし兵器は核以来
、それも核以上のたちの悪さである。ネクストのPAとてそれほどではないが広範囲を汚染することに変わりはない。最悪の場合暫くは基地を放棄しなくてはいけなくなる。

 それは軍人としては最悪でしかも無能の証明。太平洋での数度に渡る惨敗を喫した結果、今やGA艦隊戦力はBFFに依存している。ここに来てまた更に泥を上塗りすることは自身の保身にも関わってくる。それだけは何があっても、例え基地を汚染してしまってでも死守せねばなるまい。それを考えながら高官は今本日二度目のブリーフィング・ルームに向かっている。本当なら一度目で完全撃破したかったのだが全機大破及び中破と返り討ちにあってしまいこの有様である。とにかく三度目はないのだ。

 ブリーフィング・ルームに入ると既に三人とも椅子に座って待機していた。残り時間が少ない今、このブリーフィングすら勿体無いのだが一度目で雇ったリンクスの一人のオペレーターが幸い記録していたので、そのデータを複製させてもらった。現状で何も伝えられていない有沢専属の勇は性格や年齢、精神的なものを含めて重要な作戦は勿論、大抵のことは教えられていない。他の二人も勿論独立であるから知る由もなし。何も知らないのではデータを見た限りではあるがネクストが翻弄されているのだ。見ない知らないよりはマシだろう。

 高官はデスクの前に立ち、一度目と同じように室内を暗くしてディスプレイを表示、それに戦闘データを映す。

 有無を言わずに映された映像を瞬きせずにジッと見つめている三人にはこれがどう映っているのだろうか?強羅と同じタンクタイプのネクストを駆る勇はあまり良い顔をしていない。どんな武装を施そうと所詮タンクに高機動戦闘は望んではいけない。閉所に一機をど真ん中に配置しガトリングキャノンと武器腕グレネードを装備させ、そのままそこに座るだけでも性質が悪い。逃げ道のない閉所で出会おうものならこちらが諦めなくてはいけない。

 二人目のベアトリーチェ、彼女が駆るのは一度目で雇った独立傭兵の一人と同じでAALIYAHベースのネクストだ。と言ってもこちらは纏う雰囲気が貫禄を帯びているような感じがする。頼り概があると見て良いだろう。問題は見た目以上に速いソルディオスに対してどう対処するかだが、そこは上位ランカーだ。何とかしてくれると願いたい。

 そして三人目が問題である。彼女、美鳳は今のところ登録したてで実績は勿論、主だった戦果なども確認されない。一体何処であんなに纏まったネクストを調達できたのか不思議な物である。また彼女の父親は有名なネクスト技術者だった、その血筋を色濃く受け継いでいるのか彼女自身もアーキテクトを得意とすると噂で聞いたことがあるが問題は彼女自身の戦闘能力だ、一体どれほどの物なのかが解らないので未知数といったところだ。正直不安が大きく残る。

 そして、戦闘データは最後の一機となったネクストが基地へ引き返したところで途絶えている。一応機体もリンクスも無事に帰ってきたが中破で当人は気絶。あまり良い結果は残せなかった。とりあえず見せる物は見せたので部屋を明るくしディスプレイを引っ込めた。

「では問答無用でいきなり有無を言わずにこれを見せてしまって済まないが、見ない知らないよりは数段マシだろうと思ってのことだ。解っているかもしれないがこの基地は現状あまり余裕がない。よって二度目、今回で完全撃破して貰わねばこの基地と私には未来がないのだ。」

 高官の顔色は悪い。そもそもユナイテッド・ステイツの国家復活宣言を許してしまい今GAは世界を統べる三大グループの座から落ちようとしている。落ちたら落ちたでBFFグループが台頭するかもしれないが、国家解体戦争で真っ先に壊滅した企業だ、そんなのにグループ筆頭を任せたらどういう結果になるかわかったものじゃない。だからGAは今、沽券を賭けて大規模な作戦を近いうちに始めようとしている。そんな時に基地一つ陥落などあってはならない。

 最も、彼女達独立傭兵にとって仕事さえあれば何ら興味はないだろう。勇や自分には大問題であるが世界の均衡からGAが降板するだけで引き続き超資本主義社会は継続されるだろう。世界にとって、システムにとって小さな歯車に過ぎないのだから。

 どうやら全員からは何も意見は出ないようで各々、意を決したような顔だ。どっちにしろ後がないのだ。彼女達にかけるしかない。もうじきこの基地にもその轟音が届く位の距離で鉄火を交えた戦闘が始まろうとしている。

 出撃準備を整えた格納庫からまるで巣を突いたように登場リンクス以外は一斉に人間が所定の位置まで走り去った。それを見届けたベアトリーチェは何一つ考えずそのまま愛機マヴェットソングのコックピットに乗り込み、ジャッキを嵌め込みAMSを接続、システムを立ち上げ先程も行ったがシステムチェックプログラムを走らせる。表示されているコマンド一つ一つが黒味の強い灰色に染まっていたのが次々と青色に点滅していき、最後の一個も青色に変わり画面中央にデカデカと『システム・オールクリーン』と表示される。

 何時いかなる時もこれだけは何時もどおりだ。このシステムチェックだけは普遍であり不動。変わらない、そう変わり映えのする事の無い世界だ、退屈なだけの何の面白みの無い世界だ。他人にとっての面白いは自分とっては面白くない。ダンテの基準もあまり理解できないが少なくとも彼女とウェルギリウスはそんなつまらなくて退屈な色で染まっている世界を少しだけ色を染めてくれている。

 警報ブザーが機体の外で鳴り響いている。たった今出撃時刻となった、到着順となるため勇の睦月がハンガーから豪快な駆動音を響かせながら格納庫より出て行く。少なくとも基地から半径数十キロ離れてからでないと、PAの展開を許可されていない。つまりタンク型の機動力ではそこに到達するまで結構時間が掛かる。その間にもアッサリ抜けてしまうのだ。

 次に到着したのは自分のマヴェットソングだ。睦月に続いて固定されていたハンガーのフックが解除されAMSを介して自分も拘束されていたみたいな不快感からも同時に開放されて自分の体も軽くなったような感覚になる。まるで肩の荷を降ろしたかのような感覚だ。そんな感覚の中でもしっかりと足を前へ出し一歩ずつゆっくりと格納庫内を歩いていき外へ出ると漆黒の機体色を焼き尽くすような太陽の光に晒される。

 温度計はコックピット内は18℃から20℃。しかし外は砂漠地帯に近い辺りに建設されたという理由もあり外気温は35℃近い。しかし今は夕暮れだ。砂漠地帯は昼夜でその気温差が天と地も違う。昼なら場所に寄るが40℃をゆうに突破するし夜なら氷点下にまで極端に下がる。

 とにかく、自分達が戦えば戦うほど環境は汚染され砂漠化は加速するだろう。だがシステムとして根幹的に据えられてしまったこの社会情勢と世界、それらを構築するプログラムと化した自分達傭兵と企業軍とその兵器郡。自分達だけでも相当の環境汚染が起きたのだろう。証拠に第一次リンクス戦争でコジマ汚染は急速な勢いで世界中にコジマ粒子が撒き散らされ、特に主立ってアジア地域が顕著に汚染されたわけだ。現に過去幾多に渡りこのピースシティエリアはコジマ粒子に晒されてきた。今からもおきようとしている。もうこのエリアは百年単位で環境が回復するのに要するかもしれないほどだ。

 つまり結果として自分達は自分達の手で自らの首を絞める結果となっているが、少なくとも自分を入れてそのことに関しては全くの無関心とは行かないだろうがあまり興味と関心を示さないだろう。自分もそうだが勇は緊張感が抜けており何処か危なっかしい所がある。もう一人の美鳳と言う少女も地球環境を気にするようなタイプに見えない。一見しての第一印象は『他が見えづらくなっている一本道タイプ』と見た。つまり武器で例えれば槍のような人間だということ。しかもまっすぐな槍ではない。どこかで穂先が捻くり曲がっている印象に見えた。そういった意味合いでは自分と似ていると思えた部分だった。

 そんな柄にも無いことを考えながら歩いていたら外に出ていた。先に出撃していた睦月はまだ肉眼で確認できる距離だ。基地内にも関わらずQBを使って走行距離と速度を稼いでいるが悲しいかな所詮タンクの機動力では普通に走っているだけであっさり抜けてしまう。後から続いて出てきたバイタ シャン ディエンにもあっさりと抜かれてしまう。通信は開いているが「置いてかないで〜」と聞こえたのはきっと気のせいだろう。ベアトリーチェはそう思うことにして聞こえなかった振りをした。

 それから数十分通常速度で移動すると前方にその巨大な胴体を停止させソルディオス・オービットをランドクラブから切り離し、とうの既に迎撃準備を済ませていた。

「はぁ…見た目からして厄介そうね、あまりこういう面倒なことしたくないんだけどねぇ」

 コックピット内でソルディオス・オービットを見たベアトリーチェは一言ぼやく。適当に依頼を選びすぎたかなと心の何処かしらで思う。GAの情報収集と破壊対象のソルディオスを一目見るだけでぶっちゃけた話、自分の中では終わっている。従って既に帰りたい衝動に駆られているが今ここで帰ると報酬は貰えない、信頼はがた落ちとなるのである程度適当にやって適当なタイミングで機体のどっかしらに攻撃を貰い、それで撤退する。これでも色々と言われそうな感じではあるが他の二人に頑張ってもらい撃破してもらうと非常にありがたい。

「すみませんベアトリーチェさん」

 とそんな他力本願な事を考えていた時に美鳳から通信が入った。そういえば初対面でもあり話をするのも初めてだ。作戦に関することで向うから作戦指示か戦術でもくれるのだろうか、それならありがたいというもの。

「何ですか?」

 非常にそっけない、機械的な声で返答する。これは相手によっては口喧嘩の元となる事が多いが自分にとってはどうでも良いものだ。しかし相手が発した言葉は予想を遥かに裏切る物だった。

「危なくなったらターディオンで逃げるので、その時はよろしく」

 この言葉を聞いた瞬間、素っ頓狂な声を挙げたくなった喉で留める。こう言って来たと言う事は腕に自信が無いか、若しくは彼女自身の身体的な理由から長時間戦闘が出来ない事が予測できる。この場合前者であって欲しい。何故なら例え腕が無くても頭数があればまだ何とかできるのだが、もしも後者の場合嫌でも彼女は戦線離脱することになり、手数は二機となり彼女が抜ける前に自分が本気を出してソルディオスを出来る限り破壊しておく必要がある。

 面倒がより面倒になったなと臭い顔をしながら戦闘領域に到達したことをAMSから送られてくる情報で瞬時に理解しその考えを遮断する。睦月は途中からOBで猛スピードでこちらに接近してきた。美鳳が戦線離脱を仄めかした今、今日は何時も以上に疲れそうだなと溜め息を吐いた。


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「うわ…原型無いじゃん、パパの親会社のモノなんだから変な改造しないでよねっ!!」

 ソルディオス・オービットに対してではなくそのキャリアとして改造されたランドクラブに対して勇は怒りを爆発させ、まだロックオンすらしていないのに両背のYAMAGAを構えてそれをソルディオス・オービット目掛け迫撃を掛ける。撃ち出された榴弾は弧を描くようにそのまま落下していき分離前のソルディオス・オービットに一発、残りもう一発は掠ることなく地表に落ちて爆風と共に砂塵を巻き上げる。

「へぇ、やるじゃないあの娘。まぁ今回は期待できないけど」

 グレネードの射程距離外の標的に一発当てたことは素直に評価できる。恐らく先天的に高火力砲の扱いが上手いのだろう。しかし相手が悪すぎる。データを見る限りでは数時間前に撃破に駆り出された強羅と言う専属もタンク型ネクストを駆っていたがOBを使って突撃を繰り返すことで被弾を極力抑えていたのだ。それでも次々と被弾しあっと言う間に戦線離脱しなくてはいけないほどのダメージを負っていたのだ。AMSは低そうだが腕は立つことを窺わせる動きだが同じタンク型ネクストを駆る彼女にあのような動きが出来るだろうか?恐らく出来ないだろうと踏む。理由は無く直感的なものだがこういう時大体当たる物だ。そんな不安を掻き消すように速度を上げる。

 ソルディオス・オービットも戦闘状態に移行しランドクラブから分離される。現在の残敵五機。その内一機は先程の榴弾の当たり所が悪かったのか上手く切り離すことが出来ずにガコンガコンとその巨体を揺らしてもどかしそうに飛び立とうとしているが、どうやらシステムに不具合が生じたらしくその一機だけがその場で固定砲台を行うことになったらしい。これはチャンスである。

 そのチャンスを逃がさないと言わんばかりに分離された四機に単機でOBを使い突貫する美鳳のバイタ シャン ディエンは背部兵装のレーザーキャノンを展開し同時に右腕のライフルもかち挙げて高速で一気に間合いを詰めてロックオンした瞬間トリガーを引く。軌道開始直後で0コンマほどしか隙は無かったがOBで1000キロ近くを叩きだせるネクストなら充分すぎる時間だ。撃ち出されたライフル弾は途中で軌道が逸れて何発か当たらなかったがレーザーキャノンは確り直撃しその装甲を大きく溶解している。それをろくに確認する間も無く直ぐにOBを切りQT(クイックターン)を決める。その振り向き様にブレードを発生させQTの勢いのままその装甲を大きく抉る。

 一瞬のうちに苛烈な攻撃を受けたソルディオス・オービットは内部で機器がショートを起こし同時にチャージしていたコジマ粒子が内部で暴発しコジマ粒子を撒き散らしながら爆炎と共に地面に堕ちる。それと同じようにジェネレータに過剰負荷を掛けて一時的にエネルギー不足を起こしたバイタ シャン ディエンも途中まで一緒に落ちていたが地面に激突する直前でブースターを吹かし上昇、なんとか激突を避ける。

 良くもまぁあんな負担と負荷を多大に掛ける荒業をこなすなと感心しているベアトリーチェにもソルディオス・オービットの砲火が向けられる。自分の後ろにあったビルに直撃し青緑色に光る粒子が大気中に巻き散る。その際に近くに居た自機にも影響が及びPAが見る見る減衰していき、剥がれる一歩手前まで減衰させられた。にくがんでも確認できるほど電流でも走るようにコジマ粒子で構築されるPAは、バチリと音を鳴らし再び視認不可の状態になり安定する。

「ふぅん、意外と良い動きするじゃない。でも私を倒すには不足ね」

 今日は本当に感心する事が多いが、驚嘆するほどでも驚愕するほどでもない。予想の範疇よりほんの少しだけ飛び出た程度。大した脅威ではない。レールキャノンを展開し狙いを絞り狙撃する。その速い弾速は外れることなく狙った一機に直撃する。

 スナイパーライフルとキャノンのエネルギーバージョンともいえるレールガンとキャノンは、その速度も照準制度もスナイパーライフルとキャノンに引けをとらない。重量と消費エネルギーが嵩張るというのが玉に瑕であるが。

 現在実質動いているのは三機、そして不具合で動けなくなった一機、合計四機。今バイタ シャン ディエンが敵機を引き付けている。三機ともバイタ シャン ディエンに集中砲火を加えて必死に撃破しようとしている。バイタ シャン ディエン自体も回避するので精一杯と言う感じであまり長持ちするようには見えない。

 そこに睦月がソルディオス・オービットと同じ高度でグレネードの有効射程距離になると両背のYAMAGAを掃射、二発は見事直撃し黒煙を上げるが装甲が大きく拉げ、歪みへこんだだけで撃破には至らなかった。そして固定砲台となっている一機と攻撃を加えた一機が睦月目掛けて攻撃を開始する。

「うわ、っととっ!?ちょ、ちょっと、僕回避苦手なんだからやめてよね!!」

 いきなり至近距離で攻撃され、下と上から板挟みにされた睦月は止むを得ず、距離減衰を起こしやすいであろう距離のある下方からの攻撃を掠ることを選択した。結果は直撃とまでは行かなかったが装甲が大きく抉られる。掠るだけでここまで抉られるのだ。直撃した時など想像もしたくない。

 とにかく何とか安全圏にまで後退を掛けようとしたのだが、どうやらプログラムに組み込まれているらしく自身に攻撃を仕掛けてきた敵を追いかけるように出来ているらしい。恐らく対象が戦闘領域と定められている一定ラインから突破しない限り延々追い続けるつもりだろう。

「ちょっと!僕はそんな趣味ないよ!」

 幸い攻撃してきたのは二機だが追いかけてきたのは一機。いや追いかけることが出来たのが一機といったほうが正しい。しかし思った以上に機動が速く、しかも張り付くようにこちらの攻撃が当たらないような位置を取り続け、かつ一方的に攻撃を行ってくる。逐一ロックしてもすぐに外され、止まったと思いトリガーを引くが呆気なくかわされてしまう。苛立ちが隠せないが焦ったところでどうしようもないのは解っているが自分のミスは有澤重工の信頼の落胆に繋がると思うと、どうしても焦ってしまい当たり辛いグレネードが何時も以上に当たらなくなってしまう。

 そうこうして焦って周りを見ずに動き回っていたら後方からロックオンされたと警報アラームが鳴り響く。反射的にコックピット内で後ろを振り向くが器用なことにネクストも腰と頭部を回し自身の置かれた状況を確認した。なんと撃破することだけを考えるあまり熱くなってしまい、周囲の確認を怠ってしまい最初の場所まで戻ってきてしまっていたのだ。

 突然の後方からの攻撃を回避するためにOBを発動させ緊急回避を行い間一髪かと思われたが丁度良い高さでこちらの正面を取っているソルディオス・オービットが目に映った瞬間、極太の青緑色の光線が一直線に自分へ向かってきたと視認出来た直後に轟音と衝撃、振動に襲われコックピット内は赤く点灯し朦朧とする意識の中、勇は機体状況を確認すると見事に下半身と上半身が綺麗に吹き飛ばされているらしい。幸い自身は生きているようだが戦闘不能なのは考えるまでも無いだろう。

「ご、ごめん…僕ここまでみたい…あとよろしく。…ごめん、パパ…」

 薄暗くなってしまった勇はそのまま朦朧とする意識を繋ぎ止める事が出来ずに目を閉じてしまう。

 あまりにもすばしっこいソルディオス・オービットだが動き自体も意外と複雑で仕留めるには時間が掛かりそうだと思っていた矢先に、レーダーから緑色の光点が一つ消える。光点が消えた方向に電光掲示板を思わせる頭部のカメラアイを向けて倍率を上げて確認する。

 脚部は大きく吹き飛ばされ、内部構造が剥き出しになり大きく抉れているのみならず融解してしまい、まるでアイスのように溶けているようにも見える。上半身はその遥か後ろに転がっており砲身などは長さが仇となったのか腕のグレネードはあらぬ方向に折れ曲がっているのと砂漠に突き刺さっていた。背部兵装のグレネードも転がっていった過程で強制的に外されてしまったのか二つとも転げ落ちている。だが一見してみる辺り脚部に対して上半身は割と無事なようである。

 恐らく勇自体は死んでいないはずだ、問題は内蔵や脳だが耐Gジェルで満たされているのだ。そう簡単に衝撃と振動が伝わる物ではない。第一他人の心配をする暇など無いしするつもりもないベアトリーチェは即座に意識を戻して集中する。結局二対一の構図が二つ出来ただけで状況は大差が無かったが勇が与えた至近での榴弾のダメージは相当のものだったらしくその大きく拉げた装甲に向けてプラズマキャノンの照準を合わせてタイミングを合わせて発射する。

 案の定、その拉げた装甲をアッサリぶち破るとそのまま内部を食い破り貫通する。貫通したオービットは当然ながら即爆発し飛散する。これで本当に三機となりバイタ シャン ディエンの方向に向き直ると同じように一機を再びあの無茶な機動で撃破していた。最初に見せたのと違い今度はブレードをそのまま突き刺しOBで一気に引き斬ると言った相当な無茶であった。ブレードを発生させたままOBを使うなどジェネレーターにもリンクス自身のAMSにも多大な負荷をかける。恐らく強烈な情報量を叩き込まれ頭痛と吐き気に襲われているはずだろう。

「…クッ、急激な加速とそれによるジェネレーターへの過剰負荷・・・無理、しすぎたね」

 予想以上の激痛に苦しむような苦しみを抑え込み、冷静に無理をさせた機体が、特にジェネレータが悲鳴を挙げているとAMSが教えてきた。それだけでない。機体各所のエネルギーバイパスに伝達機構にも被害が及んでいたのだ。左腕のバイパスなど壊滅的で過剰不可のせいで先程から動かそうと思ってもピクリとも動かない。逆にAMSを経由して動かなくなった愛機の左腕が自身の左腕にもフィードバックされ焼けるような激痛に襲われている。そもそも高いAMS適性持っているといってもそれ以上の出力に設定しているのでどんな戦場でも短期決戦しか望めないのだ。そして丁度タイムリミットが訪れて頭痛がより激しいものとなり眩暈に吐き気も一段と激しいものとなる。これ以上は自分が持たないと判断した美鳳は進路を基地に変えて戦線離脱を行った。

「すみません、もう帰ります」

 これが今、激痛に襲われて取繕う余裕の無い自分が言える精一杯の言葉だ、あとで幾らでも罵声を聞くつもりだ。だがこれ以上の負荷に自分が耐えれるわけが無いのでAMS出力を現状基地へ引き返すのに必要な分だけに絞り落とす。頭痛もいくらか和らいだがそれでも視界はグルグルと回り始めた。もうまともに動かすことが出来ないと判断しオートパイロットシステムに切り替えて基地への撤退を任せて自身はそのまま激痛から逃れるように意識を落とした。

 結局、結局自分が頑張らないといけないんじゃないか、と心の奥底で本当なら既に自分は適当なところで撤退して減額されても高額が転がり込んでくる算段だったのだ、それが睦月は一機を身動きを取れない状況にしたが撃破され戦闘不能、バイタ シャン ディエンは無理なことをしたせいでリンクスにも影響が出たのかそのまま戦線離脱してしまった。

 当初思い描いていた状況とはまるで違う、楽して貰おうとしていたのが今では自分が全部落とさなければならない状況下にされてしまい、普段感じることの無い感情を珍しく自覚しているベアトリーチェは不甲斐無い味方への怒りをソルディオス・オービットにぶつけた。

 残っていたマシンガンで弾幕を張りつつ接近、プラズマキャンを発射して一時的にECMを発生させて目晦ましすると逃がさないと言わんばかりに背部兵装を二つともパージするとOBを使って更に加速、そのまま砲門に左腕のレーザーブレードを突き刺して引き抜き、その中にマシンガンの残弾を全て撃ち込んだ。

 そして撃ち終えたマシンガンも捨ててこちらに照準を合わせたばかりのソルディオス・オービットの攻撃をQBを使って前進し僅かに頭部を掠るだけだった。直撃する筈だったそのコジマキャノンはたった今彼女によって爆発寸前だったオービットに直撃し爆発、四散する。

 そのまま連続でQBを使い一気にランドクラブに降り立つと、最後の一機に向けてブレードを突き刺すとそのままQBを使って前進し、後は水平推力のみで切り裂きながら上を滑るようにして進んでいくと丁度山なりの軌道を描く。最後に至っては勢い余り振り切った瞬間、アッパーのように腕を高々と振り上げてしまう。

 やることはやったと思い、OBを発動させてその場から緊急離脱、中でチャージされていたコジマ粒子が暴走し大爆発を起こすとそれはランドクラブも巻き沿いにし大爆散、粉々となり雨のように破片が降り注いだ。立ち上る煙は黒煙と青緑色のコジマ粒子の二つでまるで遺伝子のように絡み合って立ち上っていくのであった。


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 基地へ帰ったベアトリーチェはハンガーに固定されたのは順番で一番先頭、しかし帰ってきた順なら一番最後である。先ず最優先で勇の睦月が回収され即座に上半身のみが宙吊りにされる形で固定され急いでコックピットハッチを爆破ボルトでハッチを破壊し強制的にこじ開けると、蒸し暑くなったコックピットの空気が外へと放出される。こんな状態の場所に長時間いたら危険である。しかも意識も無い。早々に救助され医務室に運ばれていった。

 その光景を降りてから見たベアトリーチェは、ふぅ、と大きく溜め息を吐くと自分の隣のネクスト、バイタ シャン ディエンを見ると睦月と同じように爆破ボルトでコックピットハッチを強制開口して彼女を運び出していた。どうやらAMS越しにその負担が極端にフィードバックしてしまったのだろう。その負荷に耐えられず気絶してしまった、そんなところだろう。

 だがそんなことはどうでも良い。結局は自分が頑張らなくてはいけない状況に陥り、結果として依頼は達成できたのだがそれでもだ。ヘルメットを脱ぎ艶のある黒髪を大きく揺らして完全にやる気をなくしたその目は、何処を見ているのか解らないほど空ろであった。

「はぁ…疲れた、さっさと報告して報酬振り込んでもらって、さっさと帰って寝よう」

 そうぼやくとベアトリーチェは踵を返して先ずはベトベトになった体を洗うため、シャワー室を目指したのだった。




後書き
書き終えました、意外と長くなってしまいました(汗)しかしまぁ、他に出ていない、若しくは余り出ていない、初登場のキャラなどを上手く描けているのか正直、ド微妙です(大汗)もしも高い期待を抱いていた人達の期待を裏切ってしまっていたら申し訳ありません。今後も精進します。因みに次回はまだ考えてません。その内配信しようと思います。では失礼しました〜。

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