Wiseman Report
『所属不明AF撃破』

 「Ecdysozoaとでも命名しようかしら?」

 薄暗い格納庫の中、一人の女性が眼の前にあるアームズフォート(AF)を見ながら呟く。明るい緑色の髪を揺らしながら、『Ecdysozoa』のつづりを確認知るように宙に書く。『脱皮動物』という名前が付けられたこの機体は確かに見た目の通り脱皮でもしそうな芋虫と言うものを連想させそうな外見をしていた。

 それは『ジェット』と呼ばれる特殊AFであり、その外見とは裏腹に強力なブレードを使った接近戦型の機体である。その威力は分厚いビルでさえ「チーズのように切り分ける」というほどの威力を持っており、従来兵器では一瞬で、特殊な完全防護膜プライマルアーマーをもつネクストでも数秒耐えるのがやっての出力だ。

 また、その防御性能、耐久性能は大きさからは想像できないほどずば抜けており、ネクスト級の火力でも外装の一次装甲を破壊するだけで決定的ダメージを与えるのは難しいとさえきている。唯一、弱点と言えば重装甲を突き詰めた結果排熱が追い付かず、機体上部に放熱板ユニットを取り付けることだろう。ココには放熱の問題上、装甲を取り付けることが出来ない。つまりは硬い殻の中で唯一柔らかい内臓と言うわけだ。

 そんな大きな弱点を抱えた上、もう数年も前におきたORCA旅団によるクローズ・プランの際投入された旧式とも言うべきものであったが、今でも現存するAFの中でその戦闘力は充分上位クラスだった。

 しかもこの機体には更に改良が加えられた後があった。まずは表面装甲が以前までのものより更に大きくなっている。また、上部に見えていた放熱板ユニットが今は覆うように装甲が追加されており、以前までの弱点をカバーしていた。その上、後尾にはなにやらアーム状のユニットも取り付けられており、更に何らかの機能が付加されている。

「……ふん、ゴテゴテつけてるがどうせ張子の虎だろ?技術者なんざ、なんでもつければ良いと思ってるんだろうが、こんなもんつけたって大して役にたたねぇよ。」

 機体表面装甲に先ほど呟いた名称をカラースプレーで書き込んでいた女性の後ろで男が小馬鹿にしたように言う。短く切られ、つんつんと立った髪。年齢はまだ若く、十台がようやく終わった青年のようだった。その声は呟いたと言うより、わざと聞こえるように言った、と言うほうが正しいほどの大きさだった。

 女性は手の動きを止め、男のほうに振り返る。男はそれに「なんか文句でもあるか?」っと言いたそうな顔を向けるのだった。逆に女の顔には、にっこりと優しげな笑顔。だが次の瞬間、手に持ったカラースプレーが男のほう向けられ、勢いよく噴出した。

「ぃっ!? ぎゃぁああぁぁっ!!?」

 それを顔に真正面から受けた金髪の男は驚きの声の次に悲鳴を上げるとゴロゴロと床を転がる。ちなみにスプレーは水性であるが、もちろん眼に入ればただではすまない。現に眼に少し入ったのか、激痛でまだのた打ち回っている。

「失礼なことを言わないでくださいまし。どこぞの出来損ないの坊やより、数倍役に立ちますわ。年上にそんな舐めた口を利くなら、せいぜい女の一人も満足させられるようになってからしやがれですわ。」

 ふん、っと鼻で笑うと緑髪の女性はまたAFに名前を書き込む作業を再開する。

「て、てんめぇ……好き勝手言いやがって…犯すぞ、こらぁ!!」

 金髪の男は必死に目をごしごしと擦り、あふれ出た涙で歪む視界の中女を睨みつける。その気配には、殺気というものが混じっているようだった。その手が懐へ伸びようとしたとき……。

「そこまでだ、アジタート、ドルチェ。仲間内での争いは禁じたはずだ。」

 金髪の男の背後から声がした。太く、逞しい声。驚いた金髪の男は振り返れば、ソコには屈強な体を持った褐色の男が一人。顔には深く皺が刻まれ、顔の半分には火傷のようなあとまである。だがもっとも驚いたのは、この男の気配がまったくしなかったことだ。

「っ!? リゾルート! てぇめ、何時からいやがった!!」

「お前がスプレーをかけられたところからだ。…アジタート、懐にある拳銃は抜くな。抜けば私はお前を殺してでもとめねばならない。」

 褐色の大男、リゾルートの言葉には重圧がひしひしと感じられる。金髪の男、アジタートはその言葉がまぎれもない本当であることを悟ると、舌打ちしつつ懐から手を離した。

「あっはっはっ!やっぱ坊やじゃその程度でございましょうねぇ?」

「ドルチェ、お前もだ。さっさとそのAFの最終調整を済ませて実戦データを取って来い。我々とて何時までもこのままというわけにいかんのだ。」

 アジタートへけらけらと笑いつつ指をさしていた緑髪の女性、ドルチェもまたリゾルートに釘を刺され子供っぽい仕草で小さく舌を出すと装甲へと名前を書き上げた。

「……我々は世界に示さねばならないのだ。企業という支配者の不必要さを。我等、『アヴローラ』が。」

 そんな二人からAFへと視線を上げたリゾルートは呟く。その声には先ほどまでの重圧はない、悲しさと優しさが混ざり合ったような静かなものだった…。




 揺れの激しいトレーラーの中、後方の格納ブロックでベアトリーチェは愛機マヴェットソングの最終確認をしていた。自分の命を預ける愛機である以上、状態は良好なほうが好ましいし、何よりそうでなければ戦場で生き残ることなど出来ない。何度も実戦へと出る前に繰り返したチェックは、彼女の中でもはや習慣とも言うべき位に体に染み付いていた。

 先ほど確認したソフト面とあわせ、外部にも変った点は無い。さっき機動音も聞いたが、いつもと変っている様子も異音はなかった。武装の弾数も照準も同じく…完璧と太鼓判を押せるほど甘くは考えていないが、充分合格点だ。もう一度見上げる、漆黒に赤いラインが印象的なマヴェットソングもまた彼女を見下ろすようにこちらに頭部が向いていた。

「良い機体だな。」

 自分の機体の後方から声が聞こえる。その主は直ぐに機体の陰からこちらへと顔を出し、近寄ってきた。黒眼に黒髪。色は自分と同じだが短めに整えられ、少しあげるように整えた前髪。彼はこのミッションを一緒に受け、さきほど合流したばかりのリンクスだ。彼も先ほどまで自分の機体の最終チェックをしていたようだったが、終ったのだろうか。

「No.11グローリィだ。よろしく頼む。」

「初めまして、ベアトリーチェよ。今回はよろしくね。」

 口元に小さく笑みを浮かべ、手を差し出すグローリィにベアトリーチェも同じように手を出し、握手を済ませる。少しばかりグローリィには友好的な雰囲気が見られているが、ベアトリーチェにはそれが感じられなかった。どうでも良い、挨拶されたから返しただけ、そんな印象だ。ベアトリーチェは握手していた手から力を抜くと、彼の手からするりと抜け落ちる。

「ベアトリーチェ。今回のミッション、君はどう思う…?」

「…どう、とは?」

 もう一度自分のネクストを見上げて、その外装を確認するような仕草をしていたベアトリーチェにグローリィは適当な壁に寄りかかりつつ問いかけた。少しばかりトレーラーの音が五月蝿いから大きめの声だが、ベアトリーチェはいたって普段通りの声。少し聞きづらそうなグローリィはかわらない調子で話を続ける。

「ターゲットのことだ。GAからの情報だと相手は過去にORCA旅団が投入したアームズフォートと同種と言う話だ。いまどきそれを所持して、運用するような組織などそう多くは無い。」

「……どこかの企業の内部に、ORCA旅団の芽が残っていそうな言い方ね。」

 アームズフォートを建造、所持、運用できる組織などそう多くは無い。当たり前だ、アームズフォートは通常の一般兵器に比べかなりの大型だ。有名なのを上げれば地上最強を名乗る今回の雇い主、GA社製大型アームズフォート『グレートウォール』のような全長7キロ以上と言うものまである。そんなものを作れるのは今の世界を支配する企業だけなのだ。

 企業ではないが、それを作り出したORCA旅団は例外と言える。その組織規模は企業にも劣らないほどであり、過去のクローズプランで彼らは12体ものネクストを投入した反企業組織だ。現在はクローズプラン終了後全ての幹部が戦死し、ORCAは自壊したと言う話であったが…。

「そこまでは言わない。だが、可能性は無いとは考えないし、依然どこかで根が残っていても不思議じゃないだろう?」

「…そうかもしれないわね。」

 ベアトリーチェはそっけなく答える。確かに、彼の言うことも可能性はないわけではない。だが、はっきり言えば自分にはさほど関係が無い、っというより興味が無いのだ。ベアトリーチェにとって今回の任務で重要なのは自分達が完遂できるかどうか、そして報酬が得られるか…だった。そんな様子の彼女に苦笑を浮かべるグローリィ。なんとも、話しにくい相手だ。

『グローリィ、マリーツィアです。目標地点に接近しました。お二人ともネクストへの搭乗と起動をお願いします。』

 グローリィも自分の機体で待機しようと壁から背を離したタイミングで、格納ブロックにあるスピーカーからオペレーターの声が聞こえる。歩く速度を少し速めると自分の愛機、ノーヴルマインドへと乗り込んで彼女へ返事をする。青に白というカラーリングの機体は、エネルギー系の武装を主体とした中量二脚タイプ。機体本体のバランスは良いが、それを武装が偏ったために生まれた過負荷のエネルギー効率に崩されてしまっている。

 普通のリンクスから言わせれば、偉く機動に気を使う機体なのだ。攻撃とQBのエネルギー、そのどちらにも注意を払わなければまともに扱うことは出来ない。だが、彼はそれを難なくやってのけている。そうでなければ、この機体でランクNo.11などと言う地位につけるわけが無いのだ。

 シートに座り、グローリィはAMSとの接続を開始する。同時に先ほどまで感じなかった圧迫感が頭に直接かかってくるような感覚があった。AMSはリンクスの持つ得意な知覚能力を増大させ、ネクストの制御コンピューターと脳の感覚を直結させる。それはまるで、機体自体が自分であるかのように感じさせるものであった。現に今は自分の見えている風景は愛機のセンサー類が捉えたものであり、それを補助のコックピット内モニターが映し出している。

 実際、開発者が言うのはこの補助モニターも必要が無いそうだった。機体とリンクス、それが一体になれば確かにモニターなど見る必要は無い。だがそれはAMSの負荷が極端に高くなり、パイロットへの負担が大きすぎることから現在のスタイルがとられているという。その証拠に、まだこの技術が開発されたばかりのころは高負荷にパイロットが廃人になるケースもあったという。

 流れ込んでくる情報量を調節しつつ、起動を完了すると機体に異常が無かったことをコンピューターがグローリィに教えてきた。

「…起動した。マリーツィア、彼女のほうはどうだ?」

『同じく、起動を確認しています。…目標地点手前10kmに到達、これより格納スペースのハッチを開放します。…お二人とも、お気をつけて。』

 格納スペースの周囲の壁が外側へと開き、屋根が前方へと折りたたまれるようにしまわれる。同時に外の焼けた砂、それにそれを運ぶ風と熱せられた外気が二人の機体を撫でた。バシュッという独特の音で機体をロックしていたアームが外れるのを確認すると、早速マヴェットソングは発進していく。

 続いてノーヴルマインドがトレーラーを気遣ってゆっくり降りたころには、OBで戦場へと向かっていた。どうやら彼女はこちらと協力して行動する気はないらしい。だがグローリィはそれを別に止める気はなかった。リンクスである以上、彼女にも彼女なりの考えやポリシーがあるのだろうと理解しているからだ。

 OBを起動して後を追うと周囲の荒れ果てた風景が後ろへと流れていく。乾いた砂、それに半分埋もれたビル達……ココが以前大きな街だったとは思えないほどだ。今の世界は何処を見ても大して変らず、こんな風景しか残っていない。もはや世界は…人が住むところではなく企業同士が、そしてそれに命じられるがままにリンクスが戦いあうだけの舞台にしか過ぎないのかもしれなかった。

『マヴェットソング、敵との交戦を開始しました。』

「…敵戦力を確認、こちらも作戦行動に入る。マリーツィア、サポートを頼む。」

 オペレーターからの通信に気持を切り替える。そうだ、自分にはやらなければいけないことがある…。グローリィは正面を睨みつけると黒いネクスト、マヴェットソングが虫のようなAFジェットへとマシンガンを連射し、襲い掛かっているのが見えた。数は小型が3機、大型が1機。比較的散開して部隊を展開していたらしく、マヴェットソングへは攻撃を受けている小型ジェット以外からの反撃は無いようだった。

 それにグローリィは小さな違和感を覚えた。なんで相手は4機で連携をとろうとしないのか…?いくら戦闘力の高いAFと言えども、単機でネクストを圧倒できると言うわけではない。数がそろっている以上、連携すれば余計な被害も抑えられるはずなのに…それさえ出来ない素人と言うわけではないようだが、まるで何かを試しているようだった。

 その間にも、マヴェットソングは左腕に装備された高出力レーザーブレードで一機、小型のジェットを血祭りにあげていく。ジェットの攻撃は強力だが、彼女に対しては余りにも遅い。展開する無数のレーザーブレードを難なく潜り抜けたマヴェットソングは、トドメに正面から斬りつけ、そこへプラズマキャノンを叩き込んで止めを刺した。

 グローリィも近くにいた小型ジェットへと攻撃を開始する。やはりこちらにも仲間のジェットからの支援はない、単機で反撃してくるだけだった。

「…妙だな…。ベアトリーチェ、気をつけろ。」

 もしかしたら何かあるのかもしれない。そう考えた彼はマヴェットソングに注意を促すが、彼女はそんなことはお構い無しに次の小型ジェットへと攻撃を仕掛けていく。やはり彼女のほうも変わりない様子の単調な反撃……考えすぎなのだろうか?

 グローリィはいまだ違和感を拭うことができないままだったが、眼の前の小型ジェットへとレーザーブレードを突き立てるとQBでそのまま走り抜ける。側面を撫でるように切り裂かれたジェットは、ノーヴルマインドが離れることに爆発、粉々になった。残すは改良型のジェットのみ。調度マヴェットソングも目標を撃破したらしく、同タイミングで目標へと向かっていく。

 最後に残された改良型は、今までのジェット以上に異形の姿に見えた。丸みを帯びていた装甲はより盛り上がり、一回り大きく見えるほどだ。こちらが接近すると即座にブレードを展開して応戦してきた。先ほどの小型以上に高出力のブレードは固定式だけではない、移動式のものも備えており、こちらの動きに合わせて追うように光の帯が走ってくる。

 二機はお互い左右へと挟み込むように離れると、攻撃を集中する。マヴェットソングはマシンガンとプラズマキャノン、ノーヴルマインドはレーザーライフルとチェインガンを次々と叩き込むのだが、そのほとんどは装甲で防がれ、有効打を与えているようには見えなかった。

「やはり、放熱板を攻撃するしかないか…。」

 グローリィはミッション前に教えられたデータでジェットのスペックをみていた。表面は強固な装甲でも、放熱板までは同じにすることは出来ない。それが弱点のはずだったが…。同じことを考えたのかマヴェットソングはジャンプすると真上からジェットの放熱板へと攻撃を仕掛ける。だが、その攻撃はソコを覆うように取り付けられた装甲に阻まれてしまったのだ。

 同時に、反撃と言うようにパッとレーザーブレードがジェットの全身から周囲のもの全てに襲い掛かる。ノーヴルマインドはそれを回避する最中、一本のブレードが大きな廃ビルをきりつけるのが見えた。ブリーフィングでもオペレーターに注意されたが、聞いた通りビルは一瞬で切り裂かれると、あっさりと倒壊していく。たいした出力だ…まともにくらえば次は自分が同じようになってしまうと思うと背筋にぞくっという寒気が奔った。

 真上で攻撃をしていたマヴェットソングはそれを乱れのない、流れるような動きで回避していく。しかし途中、妙な方向から走ってきたブレードに右手のマシンガンが切り裂かれ、即座にパージする。見ればジェットの後尾から、まるで文字通り尻尾でも出すようにでたアームからブレードが展開されていたのだ。

 ジェットは移動速度も遅く、機体表面にある溝を走るようにしかブレードが展開できない。故にブレードによる攻撃方向や斬撃のルートが制限され、パターン化しやすいのだ。いくら威力が大きくても当たらなければ意味は無い…その弱点を補うために装備されたものだろう。

「マリーツィア、今までの戦闘で得られたデータの解析は出来ているか?」

『ええ、問題ありません。やはりかなりの防御力とブレード出力が―』

「いや、そっちじゃない。知りたいのはアイツの熱量だ。」

『え?熱量…ですか?』

 マリーツィアは直ぐに観測されたデータを送ってくれ、AMS経由で直摂脳に届く。先程よりもすこしだけ圧迫感が強くなったのを感じつつ、グローリィはそれを確認すると思ったとおりのことが起きていた。ジェットの機体表面熱量が高い。表面装甲越しでもかなりのものになっている。やはり装甲を放熱板に取り付けたことで放熱が不完全にしか行われていないのだ。このままではオーバーヒートしかねないことは眼に見えている。

 だがいくらなんでもオーバーヒートで行動不能になるような中途半端すぎる改良はしていまい。ならば…。ノーヴルマインドは後尾のアームからレーザーブレードが消えるのを確認するとソコへ攻撃を集中し、破壊する。そしてジャンプし、先ほどマヴェットソングがやったのと同じように放熱板を覆う装甲がある背中へと飛び乗った。それと同時タイミングで、眼の前の装甲がパカッと開いたのだ。

「やはりな…。」

 グローリィは小さく呟くとソコへと至近距離から全火力叩き込む。チェインガンとパルスキャノン、圧縮された排熱蒸気が機体に吹きかかり、PAとメインカメラ画像が揺らぐなか、二つの攻撃で回っていた放熱ファンが次々に穴だらけにされていくのが見えた。ある程度攻撃するとまた装甲板がファンを保護するように閉められるが、もう遅い。ノーヴルマインドがジェットの背から飛び降りて離れるのと同時に内部で起こった爆発でレーザーブレードの溝から火が噴出した。

『なるほど……いくら装甲をまとっても放熱するときはファンを外にさらさないといけない…。』

「そういうことだ…。撃破を確認、ミッション完了だ。」

 内部で起こった爆発まで表面の重装甲に押さえ込まれ、原形を保ったままレーザーブレードの溝から燃え上がるジェットを見ながらグローリィはAMSの出力を落とす。和らいでいく圧迫感に小さくため息をつくと、コックピット内にある写真へと写真を動かす。

「…また違ったか…。」

 自分の探している相手は何処にいるのか…彼の復讐はいまだ進展する様子はなかった…。




 燃え上がるジェットから離れて行くネクスト二体を遠くの廃ビルの中で眺める人物が一人いる。

「あはっ♪強い強い、ネクストってやっぱり最強ですわね。」

「楽しそうに言ってる場合かよ、ドルチェ。お前のあれ、簡単に壊されちまったじゃねぇか。」

 双眼鏡で離れていく青いネクストの背を眺めているドルチェは楽しそうに笑う中、背後で中心が丸々抜け落ち、大穴が開いた廃ビルに隠すように置かれたトーラス系ネクストの頭部に座っていたアジタートが呆れたような声を出す。

「構いませんわ。あれは半分遊びですもの。」

くるっと、踊るように一度回ってから振り返るドルチェ。えらく上機嫌な様子で突き出されたネクストの手に飛び乗ると器用によじ登ってアジタートの横へと移動する。顔にはいまだ、遊んでいる子供のような笑顔。

「遊びって…あとでリゾルートに怒られてもしらねぇぞ。」

 アジタートは疲れたようなため息混じりに、立ち上がるとコックピットへと戻っていった。

「…ふふ、お子様にはわからないでしょうね、この気持ち…。」

 その後を追うようにコックピットへと移動するドルチェは、立ち止まるともう一度だけも上がるAFを見た。

「ふ、ふふっ…。さぁ、まだまだ一杯ありますわ…。楽しみましょう…この世界と言う名のフラスコで、楽しい、とてもたのしぃ、実験を…。あは、ぁははははっ♪」

狂ったような笑みが廃ビルの中で響く。それはまるでこの壊れかけた世界に歓喜する狂者そのものだった…。


登場リンクス一覧
グローリィ(ノーヴルマインド)
ベアトリーチェ(マヴェットソング)

あとがき

 祭りが…地域祭りがね…。(ぇ
 どうもこんにちは、毎度毎度作業コシヒカリの言い訳コーナーです。
 いや、実際8月は忙しいのです。いろいろある中で一番は地域行事の祭りですね。田舎の祭りなので、お祝い=酒という、好きな人には良いですが適正がない人には極端な拷問的行事なのです。
 以前倉さんに話したら羨ましがられましたが…すみません、私はSAKE(酒)適正0なんです。(ぁ

 そんなこんなで潰れつつ書き上げた今回のこれ、ちょっとぐだぐだですね…(汗
 本当ならもっとお二人をかっこよく出来るはずなのに…未熟ゆえに、お許しを…(しくしく
 自分の中で今回グローリィはまじめな人というイメージでした。復讐と言う点がありますが、彼を物語る核心っぽいので今回は余り見せず…。話が進み見せる機会が作れると嬉しいのですがね。
 ベアトリーチェは見ての通りそっけない人ですね。自分から周囲に余り干渉しないというか…彼女も彼女なりの人間らしさが見せられるように出来るよう頑張りたいです。

 裏話をすると、今回搭乗したトレーラーは実は機動兵器用のもので、発進時格納スペースの床がそのまま電磁カタパルトになるという設定がありました。しかし、発進シーンを書いていて『…うん、微妙だよね。』っと、やめた…。
 いや、ラインアークがWGをカタパルトで発進してるシーンがあるからありなんでしょうが、私が書くとガン●ムっぽくなるので。(汗
 今回のシリーズ作品は独自の兵器類が出てきます。多分つっこみどころ満点でしょうが、そこらへんは軽い気持で流してやってください。
 ではでは、またお会いしましょう〜。

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