『L'HISTOIRE DE FOX SS』
-窮鼠なりえれば猫をも屠るか?(後篇)-
/1 作戦目標となる森の手前数百メートル地点に輸送大型ヘリが差し掛かると早速ロックが外される。空中から降り立った二体のACは着地するなりお互いをカバーしあうように周囲を見回した。まだ森に入っていないために、前方の木々にこそ視界がさえぎられるがそれ以外は何もなく、周囲の状況は把握が容易であった。今のところ敵影らしいものは視界、レーダーともにない。 ここに来るまでに雇い主からの資料を整理していたが、輸送していた物資車両はともかく護衛のMTは3機だったという。つまり最低でも3機相手に戦える戦力が襲撃側にはあったことが理解できた。それがMTなのか、ACなのか。そこまではっきりとしないものの用心に越したことは無い。 「敵影無し、森のほうに入らないとだめか。クフィー、俺は西側から回るからお前は東側から回ってくれ。」 『あ、ああ、……分った…。』 クフィーの返事にはどこか元気がなく、ACは見ていても判る注意力が無い動き。パンツァーディンゴは真っ直ぐに森を見つめたまま動かなくなっていたのだ。あの様子だとまだルナの話にあった『ゾンビAC』なんてくだらないもののことを気にしているようだが……先が思いやられる。 「おい、さっさと集中しろ。手前が呆けているせいで撃破されましたなんて言ったらこっちまでとばっちりだ。……まともに戦えねぇんならさっさと帰れ。」 『っ、わ、わかってる!!言われるまでも無いっ……!』 「どうだかねぇ……。」 軽くため息を漏らしながら、早速森へと移動を始めるスカイリッパー。正直に言えば不安がなくならない。戦闘でやってはいけないことはいくつかあるが、一番は彼女のように集中力が無い状態での戦闘だ。特に高機動戦を得意とする自分のACのような軽量型は一瞬の判断で撃破される可能性だってあるから余計にであった。 実際クフィーが撃破されようが自分に責任は無い、彼女だってレイブンであり、分っていてACに乗っているのだから。だがそれでも、名前と顔を知っている人物が死なれるのはあまり良いものではない。拭いきれない心配を忘れるように、ペダルを強く踏み込むと次第に大きくなっていくジェネレーターの駆動音に、ブースターを噴かすジェット音。それを聞きながら宙へとスカイリッパーは舞った……。 /2 「………。」 「…ヴォルフ、パソコンとにらめっこしてないで仕事してください。」 昼時が過ぎてもまだお客で賑わう店内。忙しそうに接客をするソイルとルナを横目にヴォルフはさっきからずっとノートパソコンをいじっては何かを考え込んでいる。いつもなら構わないが、今日は珍しくいつも以上にお客で込み合う店内に二人だけでは対応できず、溜まらず声を上げたのだ。 「もうちょっとまってくれ……気になることがあるんだ。」 一旦顔を上げたヴォルフであったが、直ぐにまた視線を画面へと戻すとキーを叩き始める。その表情はいつもよりも硬く、どこか不安を隠しているようなものであった。 「…あの二人に頼んだミッションですか?何か悪い情報でも?」 「ああ……ルナの話とこの仕事って妙に似てるから、少しな。調べてみたがこのうわさは数日前からはやりだしたらしいが、誰かが急に広めたうわさみたいだ。」 「……何のために?まさか今回の仕事の裏にその誰かというのが関係しているとか……。」 「……それが当たりらしい情報見つけたからな。ソイル、悪いけどお前はAC今すぐ取りいったら二人の援護に回ってくれ。オーバーホールも終っただろうし、足は手配しておく。」 パソコンを閉じるとヴォルフは立ち上がり、自分が持っていたお盆を受けとると接客を換わるように店内に出て行く。 「しかし、あの二人なら問題ないのでは?少なくともAアリーナランカーですし。」 「……今回に限っては、それでもヴァルプリスの足引っ張りそうなのが一人いるだろうが。」 それは十中八九、クフィーのことだろう。確かに出撃前の彼女の様子は明らかにおかしかった。ずっとヴァルプリスの衣服の裾は掴みっぱなしだし、何より一言も口を利こうとしなかったのだ。あそこまで過剰に怖がるのはよっぽど苦手なのだろうと思うが……あんな状態でまともに仕事など出来るのか自分でも不安になってきた。 /3 パンツァーディンゴは森に入ると直ぐに盾を構えて歩行による移動を開始する。一時的とはいえ飛行しているヴァルプリスの軽量機体とは逆に、重たいこちらは木々を避けながら地上を進んでいくしかない。そうなるとブーストダッシュでの移動よりも歩行のほうが安全なのだ。下手に密集した木々の中を高速で動いて激突するだけでも意外と内装機器には衝撃によるダメージが大きい。 右手に装備しているリニアライフルを正面に向けつつ、レーダーを交互ににらめっこするが今のところ敵らしいものは見つからない。今回はいつも通りのスナイパーライフルでは射程距離と命中精度こそ高い反面、補足可能な範囲が狭く視界が悪い今回のような森の中では対応しきれないと思ったため、装備を変更していた。 今装備しているCR−WH05RLAはリニアライフルでも3連射可能なタイプであった。重量こそ増加してしまっているが、攻撃力と打撃力に優れ連射可能という点でスナイパーライフルよりも接近戦では大いに役に立ってくれる。 もう一度装備を確認して自分を安心させようとするそんな時、眼の前の木々で何かが動いた。自分でもわかるほどに大きく鼓動が跳ね上がり、リニアライフルを構えるがまだトリガーは引かない。さっきもあげたが、視界が悪い今の状態では確認せずに攻撃すれば僚機を誤射する可能性だってあるのだ。 幸い、木から飛び出してきたのは鳥だった。それに思わず大きく、気が抜けたような吐息を吐くと額から汗が頬へと落ちてくるのを感じる。ずいぶんと緊張しているためか、まだミッションが始まって1時間も立っていないというのに大分疲れている気がした。 「……こちらパンツァーディンゴ。ヴァルプリス、そっちはなにかあったか?」 『いや、こっちはねぇ。ずっと木ばっかりだ……っとまて。』 「なにかあったのか?」 『MTの残骸だ。一機じゃねぇ、他にも軽装甲車両も転がってるが……こいつ等が捜索目標か?』 会話の最中に目標を発見したらしい彼は静止映像だが画像を送ってきてくれた。画像の内容と資料との計算では装備や数から行方不明になった部隊のものと一致している。転がったMTは見るも無残に所々切り裂かれており、パイロットが脱出できた痕跡は確認できない。 だがそれよりも今の自分にとってはその画像は、ルナの話を思い出させてしまうものであるほうが気になった。『継ぎ接ぎのACにレーザーブレードで切り刻まれる。』その言葉だけが妙にはっきりと頭に思い浮かんだ瞬間、警報が鳴り響く。また自分の心臓が凄い勢いで鼓動を早めるのを感じつつも、何かを確認すると画面にはECMジャマーの妨害による機能低下を伝える表示が出ているのだ。 『っ!? おい、クフィー。どうし(ザザッ―――プツッ)』 「ヴァルプリスっ!? くそ、何でECMなんて……っ!」 急にノイズ交じりになった通信は切れてしまう。更にレーダーまでもがECMの影響で時折映るものの直ぐにノイズにかき消されてしまい、ほとんど役に立たなくなってしまった。しかしパンツァーディンゴには肩装備にレーダーを搭載しており、ECMなどに対してもある程度の対応能力を持っているはず。それでもここまで妨害されるほど強力なECMを発生させられるということは、他のMTなどほとんど目と耳を塞がれているに等しいほどだろう。 自然にこんなものが発生することはまず無い。だとすれば誰かが人為的に発生させていることになるのだが……。早まる鼓動に呼吸が荒くなるのを必死で押さえようとするのはまるで狩り立てられる獲物が捕食者から身を隠し、周囲をうかがっているような気分にさせた。でも相手は狼でも狐でも無い……先ほどの通信にあったMT部隊を襲ったものだろう。 じゃあ何処から来る?少なくともレーダーをECMで妨害してくるということはこちらを発見して、襲い掛かれる距離にいるということになるだろう。周囲へと頭部を動かして見回すが映りだすのは木々の緑と、葉影の織り成す黒ばかり。相手を発見できないことに自分は尚呼吸を早めるのを抑えることが出来ず、まるで恐怖でいたぶられているような気さえした。 そんな時、後ろからチリっと背筋に何かが焼くような感覚。それは恐怖から来る焦りじゃない、経験から考えるに『攻撃される瞬間』によく起こる感覚だった。直ぐに機体を旋回させながらブースターで前に出るとシールドを装備した左手を構えなおした。同時に走る光の線に実体シールドの表面が焼かれ、溶解する。 そこからはもはや反射的な対応だった。何かを確認するよりも早く右手のリニアライフルのトリガーを引く。もはや攻撃された以上後ろにいるのが味方ではないことは明らかだったからだ。ECMでロックオンさえ制限されている中の攻撃だが、牽制の為に放ったものであるから命中するよりも距離を開ける時間を作るための意味合いが強い。 三発中一発が命中し黒煙が生まれるのを見つつ、距離が開いたのを確認するとシールドをパージして格納スペースからブレードを装備する。地面へと転がったシールドはレーザーの高熱に半分以上溶かされ、腕の一部にまで攻撃が届く寸前までに達しているのが見えた。かなりの高出力らしく、重ACのパンツァーディンゴでも下手をしたら腕くらい落されていたかもしれない。 そんな高出力のレーザーを装備するMTはそうそう居ない。となると残りは……ACだろうか。黒煙が流れて現れたその姿は確かに数体のACだった。 「え……?」 だがそれはおかしな機体だった。強いて例を上げるなら継ぎ接ぎなのだ。右腕は軽量型の腕だというのに左腕は重量級の腕だったり、足も右足は膝から下が違う製品のもので構成されていたり。どの装甲も傷だらけで、中には内部の機械構造が露出している部分まであった。まるでジャンクパーツで無理やり構成したような、こどもが作っためちゃくちゃなおもちゃのようだ。 しかし自分にとって、それは『ゾンビAC』という話の姿と一致し、更に早まる鼓動を煽るような姿だった。ただでさえ恐怖の対象。それに次の攻撃をためらってしまうと一歩、パンツァーディンゴを後退させてしまった。それに対して相手もまた、自身が苦手とする対象であることを理解しているのか一歩前進、こちらがまた一歩下がればあちらが一歩前進と、そういった動作を繰り返す。 「あ、あわ……あわわ……。」 トリガーを引く指が震え、力が入らない。反撃もせぬまま後退を続けると背後には木が在ったのか、ぶつかる音が聞こえてようやく我に帰る。しかしもうそのときにはゾンビACに自分は囲まれた後。三機居るゾンビACは何時しかブレードを振り上げると、一斉に振り下ろした。 溜まらず目を閉じると、瞼のうえからでも判るほどの激しい光を感じる。自分の体はレーザーにでも焼かれてしまったのだろうか、痛みが無いのは一瞬で蒸発したから……だがそのわりには汗で張り付くパイロットスーツの気持ちの悪い感覚がまだ感じられる。その違和感にゆっくりと目を開けてみると、眼の前の画面には頭部を吹き飛ばされて倒れていくゾンビACが映し出され。 自分ではもちろん無い。今さっきブレードが振り下ろされるのを見た瞬間、操縦管から手まで離してしまっているのだ。じゃあ誰が…?更に森に爆音が響いたかと思えば、遠くで黒煙が上がるのが見えた。その様子にこちらへと攻撃しようとしたゾンビACまで慌てたようにしている様子までわかる。 『クフィー、大丈夫か?』 いつの間にECMが回復したのか、通信から聞こえた声は自分の聞き覚えがある声だった。同時に自分とゾンビACの間に立つように降り立ったのは白と灰、そして青の塗装がされた軽量逆関節AC、ヴァルプリスのスカイリッパーだ。今もまだ硝煙の上がるガトリング砲のような砲身をもったマシンガンを残った二機のゾンビACに構えつつ。 『ソイル、お前の情報どおりだったな。ECMさえなけりゃこんな奴等雑魚も良いところだぜ。』 「? ソイルが着ているのか……?」 『ええ、遅れて申し訳ありません。しかし何とか間に合ったみたいですね。』 通信と同時に、大きく木々を飛び越えるようにして現れる青と白のAC、ブルーテイルもスカイリッパーと並ぶように着地し。 「どういうこと……?それにこいつ等、ゾンビACじゃ……。」 『あ……それまだ信じてるんですか。…それは、そこにいる彼等が流した嘘の噂ですよ。』 『俺も今さっきソイルから聞いたばっかりだが、こいつ等は単に盗賊みたいな奴らで、うわさに隠れてここを通る奴等を襲ってたらしい。どっから手に入れたのかMT09E−OWLを使ってECMでレーダーと通信を潰してから一斉に奇襲で襲い掛かるっていう、つまんねぇ手を使ってな。』 MT09E−OWLはミラージュ社製主力MTである。MTとしては平均以上の性能を確保しつつも強力なECM発生装置を搭載しており、戦闘になった場合今回のようにレーダーやロックオンを妨害してくる厄介な敵でもあった。 『ふっふっふ……ばれちまったらしかたねぇ。』 会話が終わった頃、ようやく起き上がったらしい頭部が吹き飛ばされたゾンビAC。一般回線から聞こえてきた男の声はそのパイロットのものだろう、聞く限りはこちらとあまり年が離れていない印象を与える。 『俺はバルモンテ兄弟、次男ロッシュ!!』 頭部の無いゾンビACがなにやら妙なポーズをとる。よく子供向けのテレビ番組でヒーローが取るようなポーズに似ているが、もちろんACの制御ソフトにそんな動きをさせるものは無い。となるとオリジナルなのだろう……やることがせこい割には妙にこだわっている。 『同じく、私は三男ヴィッシュ。』 さらに右側のゾンビACが、なにやらナルシストのような印象を受ける動きをし。しかし外見がボロボロのジャンクパーツ構成AC、まったくさまになっていない。 『そしておいらは四男、ラッシュだ!!』 今度は反対の左側のいたACが筋肉を見せ付けるようなポーズ。ボディービルダーがよくやるポーズに似ているが……もうそんなことはどうでもよくなってきた。全員兄弟らしいが、それぞれにわざわざ名乗るのに合わせてポーズが決まっているらしい。そんなもののためにわざわざ姿勢制御などのソフトにオリジナルをいれている様子にソイルも、ヴァルプリスでさえ呆れたように見つめていた。 『そして、聞いておののけ!!俺達のリーダーにして長男、リッシュ兄貴!!!』 三機のゾンビACが道を開けるように左右に分かれる。たぶん今言っていた長男なる人物がそこを通ってくる予定らしいのだが、一向に来る気配は無い。ただこちらも兄弟達も、シーンと静かな時が流れ。その静寂を一番に壊したのはソイルだった。 『……あの、もしかしてその長男って、MT09E−OWLに乗ってた人ですか?』 『おう、当たり前だ!なんせ俺達のリーダーだからな!!』 ゾンビAC(次男機)が直ぐに答えてくれた。 『えっと……すみません。さっきここに来る途中見つけたので、先に撃破しちゃいました。』 『…………え?』 『ってか、ECMの妨害なくなった地点で気付けよ。お前らバカか?』 申し訳なさそうに話すソイルに、話を聞いて呆気にとられたような返事を返す次男。そこにすかさずヴァルプリスが至極当然、と言いたいようなツッコミを入れた。確かにもうECMによる障害は誰にも出ていない。それはつまり長男の乗るMT09E−OWLがもう撃破された証拠であるのだった。 『う、五月蝿いやつめ!!』 そんなヴァルプリスのツッコミに気を悪くしたのか、左側のゾンビAC(四男機)がブレードを展開して突っ込んでいく。先程のパンツァーディンゴのシールドを破壊した攻撃力から、軽量型であるスカイリッパーへは一撃でも当たれば確実に撃破出来るだろう威力を持っていることがわかる一撃。しかしヴァルプリスに焦った様子は無く、むしろ面倒臭そうにため息を漏らすと小さくジャンプして難なく回避して見せた。 さらにそのまま、相手の上を取ったスカイリッパーは両手のマシンガンの照準をゾンビAC(四男機)の両腕に照準するとトリガーを引いた。凄まじい轟音と共に放たれる弾丸の閃光は、そのまま狙いを外すことなく命中して装甲を貫通し、柔らかい腹腸のような内部機関までも破壊しつくした。次の瞬間、小爆発が腕の付け根で起こると弾かれたようにゾンビAC(四男機)が倒れこむ。 『ケッ、弱ぇ……。』 まるで吐き捨てるように呟いた一言にバルモンテ兄弟次男は戦慄を覚え、そこで初めて理解するだろう。自分が喧嘩を売ったともいえる相手の存在と強さを。それは自分達のジャンクパーツで偽装し、足りない部分にMTパーツまで使った出来損ないACなどでは太刀打ちできる相手では無いということを。そして、レイブンという存在を見誤りすぎていた自分達の浅はかさ加減を。 スカイリッパーの頭部が次は次男のほうへと向けられる。それも次男にとっては、まるで蛇にでも睨まれた蛙のような気分だった。一歩、後進するけれどもそれ以上動く勇気が無い……動いた瞬間殺される、そう思えるような。しかし、そんな自分の前に出て、その視線を遮るようにする影がある。それはゾンビAC(三男機)だった。 『兄上、ここは私が……。』 『バ、バカを言うな!! ヴィッシュが勝てるような相手じゃねぇ。』 『しかし、兄を助けるのが弟の務め。ここは私に任せ、兄上は大兄上を助けに……。』 『っ!! ヴィ、ヴィッシュ……お前って奴は…。』 また妙にしなりと、ナルシストのような動きをするゾンビAC(三男機)の言葉に目頭を熱くするものを感じたのか、ゾンビAC(次男機)はまるで涙でも拭くように腕を動かした。いや、ACは機械であって泣くわけが無い。なのにわざわざそんなモーションまで入力しているというのか……本当に芸が無駄に細かい。 『さぁ、かかって来い薄汚い鴉め、この三男ヴィッシュが相―――』 しかしそんな感動的(?)シーンもヴァルプリスにとってはどうでもいい。むしろ無駄に時間が掛かっていることに苛立ちを覚えたのか、次の瞬間には先程の四男を撃破したのと同じように真上を取り、容赦なく弾丸の雨を叩き込む。『ノ〜!!?』とか、通信から聞こえた悲鳴は三男のものだろうが、それが聞こえ終わる頃には完全なジャンクと化した状態にまで破壊されていた。 『ヴィ、ヴィ〜〜〜シュ!?』 『うるせぇ、うぜぇ、面倒くせぇ!!何で俺がお前らみたいなバカに付き合わなきゃいけねぇんだよぉ!!!』 完全に頭にきたらしいヴァルプリスは着地するなり吠え、残された次男のACへと今度こそ銃口を向けた。まぁ、その気持ちはわからないわけでもない……そう思いながらも、心の片隅では兄弟達を哀れに思うソイルだった。そんな時、通信から聞こえるものがある。誰かがぶつぶつと呟いているようだが……。耳を澄ませばそれはクフィーであることがわかった。 「……こんな奴等に……こんな奴等のために私は醜態をさらしてしまったのか…?…こんな、奴等の……ために…っ。」 ゆらりと、やっと動き出すパンツァーディンゴはゆっくりした歩みで残されたゾンビAC(次男機)へと近づいていく。さながらその姿こそ、ゾンビを思わせるような動きであった。まだ通信から聞こえる彼女の声は、次第に怒りに震えたものになっていくのもわかる。 スカイリッパーにパンツァーディンゴ。二機にじりじりと追い詰められたゾンビAC(次男機)はついに背後の木にぶつかり、逃げ道をなくしてしまう。 『ま、まま、まってくれ!?わるかった、悪かったから許して―――』 『許せるわけ……。』 「……あるかああぁぁぁ〜〜〜っ!!!」 タイミングよく二人揃って怒りの声を上げるヴァルプリスにクフィー。 『っ、ぎゃああああぁぁぁ〜〜〜〜っ!!?』 「『死んで、償えええええぇぇぇ〜〜〜〜〜〜!!!』」 次男の悲鳴が響き渡る中、それをかき消すマシンガンとリニアライフルの音と森の中で激しく光る発砲光を見ながら、ソイルは小さく「二人は怒らせないでおこう…。」と小さく心に誓うのだった……。 登場AC スカイリッパー &LC005f2w03wE01Ya00A02F0aw0Fg52xiVskSM1s# パンツァーディンゴ &Lq01gj00E1g0a1I02wyw09E0yw3z9vAhI3kqg5s# ブルーテイル &Ls0055E003G000w00ak02F0aw0G013GENE1W0F2# |