『L'HISTOIRE DE FOX』
 一話 過去 -戦闘準備-

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 ズンッ、ズンッとACの歩く振動がコックピットシートへと伝わってくる。

 いつも思うが自分はこの振動があまり好きではなかった。なぜならとても落ち着かないからだ。自分はもっと静かなほうが好きなのに否応なく機体は歩くたびに振動を伝えてくる。小さくため息を吐く瞬間を見計らったように、一本の通信が入ってきた。

『ソイル、退屈かい?』

 どういうわけか、自分の今の表情でも読み取ったように。小さく笑いながら話しかけてきたのは相棒のレイブン。いや、正確にはまだレイブンではない。もっと正確に言うならレイブンにもなれないのだが。

 狭い、AC一機分の広さしかない通路はまだ自分の腕ではゆっくり歩くしかない。

 もし下手にブースターでも噴かせば壁にぶつけることになるから。だからこそこんな、ゆっくりで好きでもない、退屈な歩行をさっきからずっと続けているのだ。

「退屈だよ、そっちは・・・?」

『もう直ぐ目標地点につくよ。そこで攻撃目標を破壊するまでの辛抱だね。』

 優しい笑みを浮かべる相棒の姿が一瞬目に浮かぶ。彼は自分より一つ年上で、まだ未熟な自分に色々教えてくれる兄のような存在であり、無二の親友でもあった。もっとも、ほかの仲間達はほとんどが今はもういない。今残っているのは僕と、彼、そして姉だけだった。

 今、自分たちはもう直ぐ最終試験が行われる地点を目指している。そこはドーム状で広くなっている場所で、そこにある目標を破壊するのが僕達の試験内容だった。

「でも、攻撃目標って何? さっきのミーティングでも目標のことぜんぜん教えてくれなかったし。」

『・・・ああ、そっか。ソイルは知らないのか。それは・・・ぁ、ごめん、もう目標地点に着いちゃった。 悪いけど先に仕掛けてるよ。』

 一方的に通信が切れると通路の向こうから戦闘が始まったのか爆音が響いてくるのを機体集音機が拾う。自分も急がないと。少しだけ歩行速度を速めた。しばらくすれば明るい出口が見え始め、そこから飛び出す。そここそ目標のいるドームなのようだ。天井から降り注ぐ光が灰色の自機を照らす中、辺りを見回し。

 ACがOBを使ったって大丈夫なほどに広いその中央では二機のACがいた。

 一機は相棒の『ニュクス』。暗い緑色の軽量型二足タイプで、武装は接近戦を重視したもので両腕は武器腕のレーザーブレードSYURAが装備されている。その足元に倒れこむもう一機は青い中量二足AC、こっちも知っている機体だった。その機体の名は『ブルーテイル』そう、それは・・・。

『・・・あっ。やぁ、着たのかソイル。』

 レーダーでも見たのかニュクスがこちらへと視線、頭部を向けて確認する。

 さっきと変らない彼の声、また優しい笑みでも浮かべているのだろうとおもえ、安心できる・・・いつもならば・・・。しかし、今は違う。手が震え、背中には冷たいものが流れ込まれたような感覚がゾクリっと感じられ。

「・・・ぁ、な・・・なん・・・で・・・?」

『え?・・・ああ、これ? これが目標だよ。』

 こちらが震える声なのに対して彼の話す調子は変らない。いや、むしろ気分良さそうな少し興奮に高くなった声。

『いやぁ、なかなか手強くてね。でもやっと倒せたよ・・・ずっとチャンスをうかがっていたんだ。こうして・・・彼女を倒せるタイミングを。・・・ごめんね、ソイル。・・・・君の大好きなお姉さん、壊しちゃったよぉ・・・。』

 そう、あの機体は姉のAC。既に白い煙が昇る胴体中央には溶けたような穴があいている。パイロットの生存確率を考えるまでもない。通信からは小さくまだ彼の笑い声が聞こえている。その声はさっきまでの優しさの欠片もない、狂人のもののように聞こえた。その声に固まっていた思考が熱で溶かされたように熱くなる。そうして、身体は自然と動いた・・・。

「ッ・・・マァーーーズッ!!!」

 彼の名を叫びながら右腕のライフルを彼に向ける、彼も緩やかな動作でこちらへと機体を向けてブレードを展開。

 お互い、同時タイミングでブースター全開にすると二機は戦闘を開始した・・・。


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「・・・ぅ・・・・?」

 寝転がっている場所が固いために背中が少し痛い。視界を塞ぐものをどけるように手をやるとそれが本であることがわかった。そうだ、自分は小説を読んだまま寝てしまっていたのだ。体をゆっくり起こすと背を伸ばして。すると膝に乗せていた本がずるっとバランスを崩して滑り落ちてしまった。本はそのまま滑り続け、さらにまた落下していくと地面に落ちて広い格納庫に音を響かせながら大きく跳ね上がった。

 一瞬、しまったと後悔しても遅い。まぁこれは自分のミスだし仕方ないかと半分あきらめつつ視線を横へと向ける。そこには巨大は顔がある。ACの頭部だ。今自分がいるのは愛機の平たいコア上部・・・我ながらよくこんなところで寝れるなぁ、と感心しつつも先ほどの夢を軽く思い返してみる。

 もっともそれは夢ではない、自分の過去なのだが・・・。

「ソイル〜、ソイル何処〜?」

 そんな時、ACの足元辺りから自分を呼ぶ声に顔を覗かせる。足元には赤い髪の女の子が立っていた。実際は19歳なのにそれよりも幼く見える彼女は自分より年上とは思えない。格好もカットジーンズに黒いランニングシャツ、それに前開きのパーカーなんかを羽織った男の子みたいな動き安そうな格好をしているものだから尚のことだ。

「ルナ、どうしたんです?もう迎えが来ましたか?」

「うん、今さっきクレストから連絡あったよ。輸送機の搭載地点まで来てくれって。」

 話しながら彼女も自分のACへと搭乗するために階段を登りだす。自分の直ぐ横に有る彼女の愛機、『サンセットスパウロー』。逆関節の脚部、ミサイルを主体にした武装を持つ彼女の機体はその「夕焼けの燕」という名前の意味の通り真っ赤になっている。

「早くしないとおいてかれちゃうよ?」

 もちろんそんなことしないだろう。仕事を依頼したレイブンを置いていってどうするというのか・・・。しかし待たせるのも勿論いいことではない。早速彼女同様にコックピットへと滑り込むと機体を起動させる。低いジェネレーターの機動音が響く中、インカムを自分の耳へとセットして。

「ではルナ、早く行きましょう。」

『りょうか〜い。』

 もともとの声が大きいのか、それとも音量ボリュームが高く設定してしまっているのかわからないが彼女の返事は少しだけ自分の耳に痛く響いてきた。軽く調整するようにいじっていると先に彼女は格納庫から出て行ってしまい。自分も後を追うように歩き出した。自分の嫌なACの歩行振動・・・いや、この機体のならそれほどいやではないかもしれない。

「・・・行こう、ブルーテイル。・・・また戦場だ。」
 小さく呟くように、今の自分の愛機へと話しかける。愛機はそれに答えるように一瞬だけジェネレーターの可動音を強めたように思えた・・・。


登場AC

 ブルーテイル &LG00582w05G000I00as02FE0oa20c3J2Mo02hxj#

 サンセットスパウロー &Li005eE007g001Y505g02F0aA0Fg9640000bQ30#


 初投稿作品です、わかりにくいです、読みにくいです。
 久しぶりとはいえ、やはりあまりうまくない自分にへこみつつ、楽しいからいいかと。(ぁ

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